このページの目次
- 1 ストリンガー「田中貴史」さんに迫る
- 2 ストリングハウスティースポットについて
- 3 田中貴史さんのキャリア
- 3.1 24歳の時にテニスと出会う
- 3.2 バスケットボールからテニスへ
- 3.3 メンタル面が試合を左右するスポーツなの?
- 3.4 田中さんがストリンガーになったきっかけ
- 3.5 ダニエルが師匠
- 3.6 「かぎ針」で引っ張りあげてビジョンを広げてあげる
- 3.7 コンチタ・マルチネス選手が印象深い
- 3.8 「とにかく張るしかない!」ただそれだけ
- 3.9 選手よりハードなのでは?
- 3.10 グランドスラムの雰囲気
- 3.11 山陰に拠点を持ったきっかけ
- 3.12 失敗は成功の元
- 3.13 ガットが選手に及ぼす影響範囲
- 3.14 「オンコート」について
- 3.15 ガット張り替えの時間
- 3.16 ショップ業務と大会・ツアーの帯同の違い
- 3.17 クラウドファンディングについて
- 3.18 どこでどうすれば、ストリンガーになれるの?
- 3.19 若者へメッセージ
- 4 テニス業界について
- 5 山陰地方について
- 6 最後に
- 7 インタビューを終えて
ストリンガー「田中貴史」さんに迫る
コンセプトムービー
勉強させてください!
ストリングハウスティースポットについて
ティースポットの紹介
中途半端な仕事はしません。
他のショップとの違い
そして、使う人専用にカスタムしたものにすることです。ラケットには重さとバランスがあるんだけど、世に出ている市販品は誤差があるんです。
同じように売られているラケットでも、大きい時には誤差が7gある場合も。7g違うと、パフォーマンスも変わってしまうんです。
そういうものを同じ性格にして、最高のパフォーマンスが出せるようにしています。
小学生から80代の方まで利用
あとは外に出て行ってプロの選手のガットを張ったり、県外からラケットが送られて張ることもあります。一番遠いところからは、タイのバンコク(笑)
いつの間にかこの人がすごいってことになって、指名でやってくれって言われるんです。ありがたいですね。
「ストリンガー」ってかっこいいですよね(笑)
俺がガット張りを始めた当時は、「ストリンガー」という職種や名称は一般的ではなかった。
そもそも、これを専業にしている人が少ないしね。
職業人口
職業がストリンガーっていう人は日本で俺が初めてだと思うけどね。それももう20年も前の話になるけど。
今度弟子を一人とるのだけれど、俺の次、山陰で2番目のストリンガーと言えるようになるんじゃないかな。というか、そうなってほしいですね。
移転オープンしてから7年目
メーカーとストリンガーの関係性は?
単純に言うと、メーカーのストリンガーは宗教のようなもので、自分の商品を売りたいっていう気持ちがあって、組織として動く。だからそこの張り方が一番だと信じているんだよね。
メーカーに行かせてくれって言ったこともあるけど、「レベルが高すぎるから来ないでくれ」って言われるんだよ。レベルを上げていかなければいけないのに、上げる気がないんだろうね。
ストリンガーに要求されるスキル
それはプレーヤーに対してもそうだし、ラケット、ガット、ストリングマシーンすべてとの会話。自分が仕上げるものとの会話が大事です。
今、スポーツが職業スポーツとなってきています。その人たちが使う武器の内容を知っていないとだめだね。道具も一緒で。例えば片輪のタイヤが細い車があるとする。
普通に走ると曲がっちゃうから、ハンドルとか違うエネルギーを使って真っすぐにコントロールする。そういうシンプルに真っすぐコントロールできるものを作っていきたいし、物の本質を見極めるためには、結局会話が大切だと思うな。
プレーヤーにもストリングの知識が必要
向き合うことを他力本願にしている選手が多い気がする。肘が痛いって言ってすぐ病院や整体に行こうとするけど、まずは何故痛むのかを考えないといけない。
フォームが悪いのか、ガットが切れかけてるのか、自分にとってのイレギュラーがどこにあるのかっていうのを探るように、と俺はよく言っています。
田中貴史さんのキャリア
24歳の時にテニスと出会う
田中さんがテニスと出会った時期は?
学生の頃はバスケをしていました。バスケからテニスにシフトしたときに、テニスの魅力に気づいたんだよ。
バスケットボールからテニスへ
バスケって5人で、一つの勝ちを目指す。そうなると、プレッシャーも5分の1なんですよね。自分の調子が悪くても、ほかの4人が点を決めてくれるかもしれない。でもテニスはすべて自分で、というところが魅力的でした。
敗者復活戦も1球しかサーブが入らない(笑)それくらい、一人で抱えるプレッシャーっていうのはすごかったんですよ。
メンタル面が試合を左右するスポーツなの?
やはり、メンタルが試合を左右するスポーツなのですか?
俺は正直メンタルメンタルって言うのは「違うな」と思っている。
ウイニングアドバイザーとして考えるときに、自分も相手も同じ人間でしょ、メンタルは絶対一緒だと思うんですよ。でもそこで、心の支えが俺たちストリンガーだと思う。
田中さんがストリンガーになったきっかけ
でもテニスで勝ちを味わいたいと、サポート側でやってやろうと考えました。そこで「ボールが一番接するのはガットだ!」と思って、ストリンガーの道に進んだ。自分が張ったガットで一勝でも多く同じ勝ちを味わいたいですね。
孤独なスポーツという話があったけど、コートでは一人ではないっていう考えが俺のストリンガーのきっかけです。
ダニエルが師匠
今はもう業界からいなくなってしまったけど、ダニエルが今のノウハウのベースを教えてくれました。グランドスラムにはダニエルが引っ張ってくれて、ガットを張り始めて半年で行くことができたんです。
「かぎ針」で引っ張りあげてビジョンを広げてあげる
また、テニスの技術だけではなく、練習方法や食生活など、総合的に選手をサポートされています。
選手をサポートする際に、田中さんが心がけていることを教えてください。
これは特にジュニアのプレーヤーには絶対必要だと思います。なぜかっていうと、子供っていうのは言葉を知らないでしょ。
「なんかなぁ」って言ってたら、本当に「なんかなぁ」と思っているんですよね。少ない言葉の中で必ずヒントがあると思うので、そこを見抜いて、「かぎ針」で引っ張り上げてビジョンを広げてあげることを心がけています。
コンチタ・マルチネス選手が印象深い
俺はあの後マイケルと喧嘩してるからね(笑)
マイケルに評価されたことじゃなくて、その翌年、スペインのコンチタ・マルチネス選手という女性プレーヤーが思い出深い。
そこで俺がガット張ったら、どんどん勝っていって決勝までいったんだよね。決勝ではヒンギス選手に敗れたんだけど、あの時のことはよく覚えています。
「とにかく張るしかない!」ただそれだけ
ホテルオフィシャルっていってホテルの一室にストリンガーが泊まり込んで、練習会場まで行ってラケットを選手に渡して張り替えて、っていうのを2週間続けるんですよ。
12本入りのラケットバックに20本くらいラケット入れて抱えて、広い会場で迷いながら選手のところに渡しに行って、夕方までずっと張り続けて。昼食の時間もなくて2週間ずっとビッグマックと氷の溶けたコーラでした(笑)
酒弱いのに、仕方なくハーフボトルのワインを飲んで頭ガンガンしながら夜中までまたガット張って。
こんな状況なので、選手のことはリアルタイムでは気にできかったです。とにかくミスしないように、純粋に張ることだけを考えていました。
選手よりハードなのでは?
グランドスラムの雰囲気
ひたすらガットを張って、負けたらトレーナーやストリンガーのせいで負けたと言われる。そんな現場でなかなか余裕はないですよ。
今はそういう高い志でやってる人が少ないのかもしれないね。そこは、日本のストリンガーとして残念なところだと思います。
山陰に拠点を持ったきっかけ
フランスの大会で、マイケル陣営からストリンガーとして声がかかって、準備をしていた。しかし、その場ではヘッドハンティングは禁止だとマイケル陣営は注意を受けたらしい。
俺は、行く気があって準備をしていたのですが、マイケル陣営の方から去っていきました。
その後、俺は帰国を与儀なくされ、そしてマイケルは負けた。
「お前が日本に帰ったから負けた」と言われてね。そこから喧嘩になった。
で、もういい、マイケルに勝たせたい奴はごまんといる。でも日本一になりたい奴もたくさんいる。
では地区一番は?と考えました。地区でも勝ちたいと思っている人はたくさんいる、俺はその人たちのサポートをしようと考ええて、山陰に帰ってきました。
規模の大きい小さいは関係なく、「勝ちたい」と思っているプレーヤーの力になりたいと思った。
失敗は成功の元
マイケル・チャンのガットを張った一発目が切れてたときかな。あの時はフランスで朝から晩までガットを張り続けてて、トランス状態だったね。
このマイケルのガットで最後だ!と思ってたら切れてるの。周りの奴らは「オーマイガー!」「ジーザス!」とか叫んでた(笑)
一発目が切れていなければ、再度張り替えていなければ評価されることはなかったと思うと不思議です。時間がない中で、集中力が極限まで研ぎ澄まされていたのかもしれない。
まぁ、理屈じゃないんでしょうね。
プレーヤーより前に会場でスタンバイします。すべて終わって、プレーヤーが帰ってから俺たちは帰る。一番最後の試合まで、ガットを張る可能性があるからね。
あとは、地方のところだとストリングマシーンを置く場所の掃除から始めますね。お預かりしたラケットを汚して返すわけにはいきませんから。
ストリンガー全員というわけではないですが、俺の動き方はこんな感じ。
ガットが選手に及ぼす影響範囲
ガットの質や性能と相反する動きをすることで怪我につながるし、最悪ラケットを置く、引退ということにもなりかねません。
「オンコート」について
選手にとって一番合うもの、「勝負!」っていうときに使うラケットなんだけど、そのガットがプレー中に切れてしまったときに張り替えるのが一つ。
他にもよくガットが切れやすい選手は、それを予測して何セットまでに変えておいてと頼まれることもあります。
ガット張り替えの時間
実際「30分以内」と定義されているね。それはなぜかっていうと、引っ張って張るときに、このガットのストレスの限界値がある。
1本目を張ってから伸び始めるのが30分後と言われているから、それまでに全部張り終えないと1本目が緩んで全てが張れなくなるんです。
この選手はラケットもガットもすべてが特注で、一瞬のミスで切れてしまうようなものだった。しかも湿気がだめな素材。でもものすごい緊張するし、汗が出るから一本通して手の汗を拭いて、ってしてたら40分かかりましたね。
あれは今もう一度チャレンジしてみたいな。
ショップ業務と大会・ツアーの帯同の違い
それぞれ田中さんのお考えを聞かせてください。
どんな試合でも、緊張しますよ(笑)それは今も変わりません。
一番最初に張った時の気持ち、グランドスラムに行ったときの気持ち、それと同じように今でも緊張します。
張ってるときは血圧高いかも!これやりながら死ぬかもしれん(笑)まあそれが本望ですけど(笑)
クラウドファンディングについて
このドサ回りは選手に対するメッセージなんですよ。今の人たちは、自分が100の力を出せていないのに、環境については100提供しろと言う。
しかも今年の夏は暑くて何度も熱中症になりそうだったし、1月に広島に行ったときはめちゃめちゃ寒くてインフルエンザになるし(笑)「悪い環境の中でも、最高のパフォーマンスをしなさい」と、選手にメッセージを送る意味でやっています。
いつでもプレーヤーズファーストで!プレーヤーが足を運ぶんじゃなくて、自分から足を運ぶ。そういうストリンガーのあるべき姿を作っていかないといけませんね。
ガットを張りに行く時間がないから「田中さん会場まで来て」って言われて行ったことがあります。
その時に、ストリンガーはこうじゃなきゃだめだ、と気付かされました。その子がいなければ、ストリンガーをやめていたかもしれないな。
どこでどうすれば、ストリンガーになれるの?
他にはスポーツ用品店でやるのも、ガットを張るだけならやってやれないことはないと思う。
「極める」という意味ではここでは終われないよ、という事が理解できていればどこでも良い。環境も大切ですが、個人の意識と鍛錬次第でしょう。
若者へメッセージ
よくアドバイスするのは、「常識のない人間にはなるな」ってことです。常識外れになるには、まず常識を知っていないと。
そしてぶれないこと。とにかく自分でやれ、と。世の中に認められたかったら世間に嫌われろと思いますね。
ストリンガーに関わらず、どんな仕事でもそうだよね。
テニス業界について
近年の日本人選手のめざましい活躍について
何か業界全体の取り組みの成果なのでしょうか。
錦織選手もずっと日本にいたらあそこまでにはならなかったかもしれない。
ラケットを叩きつける・折るなどの行為への見解
試合中にラケットを折るなど、プロテニスプレーヤーのマナーの問題がたびたび報道されることがありますが、田中さんのお考えをお聞かせください。
まあ、本音はやってほしくない部分もあるけど。スポーツ全体の根底がねじ曲がってるよね。
「ラケットを折る事=良い」ということにすれば、メーカーは新しいラケットを買ってもらえるでしょ。俺は深読みして、プロが指令を受けてあれをやっているんじゃないかって考えちゃう。
それを見たジュニアの世代に、そういう感覚を植え付けるためのパフォーマンスなんじゃないかってね。俺の考え過ぎなのかもしれないけれど。
組織についての考え方
それを「こんな素晴らしいスポーツがあるから協力して」って言って広めたのがきっと協会を立ち上げた理事だったりする。
でも結局その人が退いた後は、お金の話になってねじ曲がっていく。
悲しいですよね。だから結局俺は今の連盟とか組織、誰とも協力できないんですよ。異端児です。
山陰地方について
田中さんが考える鳥取県と島根県
まあでも今はどちらも強けりゃ何でもいいって感じで、俺からすると窮屈に感じてしまうけど。
田舎だからこそチャンスがある
打つ以外の時間は勉強すればいいし。環境は自分で作るものだよね。
最後に
今後のティースポットの目標や夢
色々なことがあって、基本的に人を信じるって苦手なのかもしれない。だから、自分の技術を提供することに抵抗がある。でもその抵抗を除かなければ成長していかないと思います。
これからもストリンガーとして技術を提供していきたいですね。
敢えてライバルも出てきてほしいな。追い込まれないと力出せないタイプだし。
読者にメッセージ
自分の中に思っていることを、とにかく行動し、自分で経験してほしい。
「経験」と「体験」ってありますよね。「体験」から抜け出して、「経験」に変えることで、より良い人生になっていくと思います。
第2弾も是非お願いね(笑)
1972年1月13日生まれ
ストリンガー/ストリングハウスティースポット代表
島根県松江市出身。世界四大大会の全仏・全豪オープンにストリンガーとして参加。
参加するだけに止まらず、ガット張りの技術が評価され、プレーヤーから支持を受ける。
中でも、世界ランキング2位のM・チャンからは完全指名で彼のラケットを担当する。
後に日本でも話題となり、NHKテレビ「青春探検」でドキュメントとして取り上げられる。
その後、様々な大会でストリンガーとして参加し、最高のパフォーマンスを演出させる裏方として活躍した。
こうした活動と平行してTV、ラジオ、新聞での露出を積極的に取り組み、ストリンガーのステータスをアピールしてきた。
2001年にステータスの証であるガット張専門店「ストリングハウス ティースポット」をオープン。
プレーヤーをサポートするため、勝たせるためには場所は関係ないとし、県内外から多くの依頼を請けている。中には海外のプレーヤーからの依頼も。
インタビューを終えて
田中貴史さん、ありがとうございました!
最新記事 by poool君 (全て見る)
- 475デジタル矯正ラボ - 2024年9月6日
- 【鳥取×働く人 vol.63】ベーシスト/chang Project「吉川 衛」さんにインタビュー - 2024年7月27日
- 【鳥取×働く人 vol.62】元なでしこジャパン主将/北斗ソアラFC監督「大部 由美」さんにインタビュー - 2023年7月27日
- 【鳥取×働く人 vol.61】BAR エルドラド/居酒屋ジパング代表「植田 貴太」さんにインタビュー - 2023年4月24日
- 【鳥取×働く人 vol.60】シンガーソングライター「長尾 哲成」さんにインタビュー - 2023年4月4日
2 レスポンス
[…] […]
[…] […]