島根県安来市の石橋農園
島根県安来市下坂田町941にあるイチゴ農園。石橋農園代表の石橋賢一郎さんにご出演いただきました。
コンセプトムービー
今回の島根×働く人は安来市でイチゴ農家をされている石橋賢一郎さんです。
安来市は米子市のお隣。鳥取県西部の方々ともお取引されているそうで。
ありがたいことに、鳥取県の方ともお付き合いさせてもらっています。
意外にも、実は農家の方へのインタビューって初めてなんですよね。楽しみです。
石橋農園について
石橋農園の紹介
石橋農園は、平成28年9月に安来市下坂田町で独立、開業したイチゴ農園です。
平成26年1月~27年3月まで安来で師匠の元でイチゴ作りの修行をし、新規就農者支援として1年半実践研修をした後、平成28年の12月から5月に1作目を出荷しました。
イチゴですと収穫の時期が限られていますから一年一年が勝負ですね。
今は、平成30年12月~31年6月に出荷する3作目のイチゴを準備しているところです。
石橋農園では「紅ほっぺ」という品種のイチゴを作っています。また、島根県独自のイチゴの新品種「おくに」を試験的に作っています。
他のイチゴ農園との違いや強み
他のイチゴ農家さんとの違いや強みを教えてください。
味が良く、棚持ちも良く高品質であると自信を持って言えます。個人的に取引させていただいているお客様からは「石橋農園のイチゴを買ってから、他のイチゴが買えなくなった」と言っていただくこともあります。
石橋農園のイチゴの写真を見させてもらいましたが、色も大きさも抜群に良いですね。
また、新しい技術を取り入れて栽培することにも力を入れています。炭酸ガスの発生装置を利用して光合成を促進したり、安来市ではまだ実施の少ない「高設栽培」を取り入れたり、新しく「養液土耕栽培」に取り組んでいます。特に養液土耕栽培は、安来市の若手農家ではうちでしか行っていません。
イチゴ部会の中では最年少農家
安来のイチゴ農家さんは、どういった年代の方が多いのでしょうか。石橋さんは、いわゆる「若手農家」ということになるのですか?
農協のイチゴ部会(JAしまねやすぎイチゴ生産部会)の中では僕が最年少です。
僕の次にお若い方でも37~38歳ですね。
60代で若手と言われる世界ですから、僕なんて赤ちゃんですよ(笑)
石橋さんにとっての直近1年間
直近1年間は石橋さんにとってどのような1年間でしたか。
昨年11月からイチゴの2作目に取り組み始めたのですが、1作目の失敗を生かすことができたと思います。1作目の9月は大雨が降ったこともあり、栽培時期が遅れたり、畝が崩れるといったトラブルがありました。
1作目の経験を生かして、2作目は早めに準備をして、溝を掘るといった対策をとることができました。また、病気や虫の被害があった1作目の経験から、病害虫防除対策にも力を入れました。
その結果、新規就農者10a当たりのイチゴ収量は4tで一人前と言われる中、2作目で4.8tを収めることができました。3作目には農地面積を9.4aから14.4aと1.5倍近くの広さにし、面積を広げても良い成績が出せるように精進しているところです。
イチゴは収穫時期が限られている
農作物は1作目、2作目、という言い方があるのが新鮮に感じます。収穫できる時期が1年の中で限られているのは、農業の難しいところですね。
そうなんですよ、イチゴは年に1作。この1作が勝負になりますからね。
イチゴの場合は12月から6月まで半年間採れ続けますが、葉物は1回で終わり、年に2作3作と採れるところが違いますね。
『紅ほっぺ』の魅力
果皮や果肉が美しい紅色をしている
紅ほっぺという名前の由来は、果皮や果肉が美しい紅色をしていること、そしてほっぺが落ちるような食味の良さを表現しているそうですが、石橋さんから改めて「紅ほっぺ」という品種の魅力を教えてください。
とにかく酸味と甘さのバランスが良いということですね。
甘いだけではなく、丁度良い酸味があることが特徴です。加工しても酸味や風味が残るので、ケーキ屋さんやレストランでは喜ばれることが多いです。
また、大粒が採れることも魅力です。今まで最大で1粒130gのものもありますよ。
『高設栽培』とは?
冒頭でもお話された高設栽培について詳しく教えてください。
高設栽培は、土耕栽培と比べて人間が制御できる部分が増えます。温度や湿度、株の水を機械的に管理することができるので、コンスタントな収量の確保や収穫の時期を調整することができます。
土耕栽培では腰を曲げて行う作業も多いのですが、一緒に働く両親の体を思って、作業性も考え高設栽培に取り組んでいます。
安心・安全なイチゴを作るための取り組み
レストラン、ケーキ屋さん、一般家庭、生産されたイチゴが様々なところに行き届くと思いますが、石橋農園が安全性を保つためにこだわっていることを教えてください。
一番は品質に注意して、傷が無く、商品になるべきものを作るようにと考えています。
強い農薬は使わず、殺虫剤の代わりに天敵栽培といって「今いる虫をやっつけるための虫」を取り入れる方法も行っていて、安心・安全なイチゴをお届けできるよう気を付けています。
あえてイチゴ農家さんに聞きたい!美味しいイチゴの食べ方は?
イチゴ農家さんにズバリ聞きたい。美味しい食べ方は?
練乳は必要ですか?(笑)
だめだめ、だめですよ!!(笑)安来のイチゴは何もかけず、そのまま食べるのが一番美味しいです。
気温が低く晴れの少ない安来で、時間をかけて成熟したイチゴは最高糖度が18度にもなっています。できれば、何もかけずにつけずに召し上がっていただきたいです。
イチゴ農家さんの1日
時期によって大きく異なるとは思いますが、イチゴ農家さんの1日のスケジュールを教えてください。
忙しい時期は4~5月です。5時半には起きて、6時半から9時頃まで収穫をし、葉の管理などをしながら夕方までパック詰めをします。
そして17時には農協へ出荷し、取引のあるケーキ屋さんなどへ配達にも行きます。
逆に一番忙しくないのは7月ですかね。夏はハウスの中が40度程度になるので、作業は早朝と夕方に行います。他の時間は事務作業をしています。
丸一日のお休みってあるの?
ないですね。毎日1度は株を見ますし、温度管理のためにハウスを開け閉めしなければいけません。旅行で何日も空けるのは難しいですね(笑)
災害への向き合い方、対策など
台風や大雪への対策やその難しさなど聞かせてください。
台風や雪は、起こることが事前に分かっているので、事前にそれなりの対応をすることですね。ハウスが潰される前に雪かきをしておいたり、強制排水をしたり。
自然のことですのでね、上手にお天気とは付き合っていきたいです。
イチゴ農家に至るまで
農家を志した時期やきっかけ
ここからは石橋さんのキャリアに迫っていきます!この仕事を志したきっかけがあれば教えてください。
元々小中学生の頃から農業に興味があって、いつか自分の仕事にできればいいなと漠然と思っていました。
父が小さな畑を持っていて、畑いじりを手伝うことがあったので触れる機会があったこともきっかけかもしれません。
元々体が強くなくて、普通の仕事には就けないと思っていた
元々僕は体が強くないので、普通の仕事には就けないのではないかと思っていたました。
そこで、自然の中だと元気にいられるかなと。結果的に、今は薬も飲まずに生活できています。そういう意味では天職だったのかもしれません。
いえ。うちは非農家でしたので農地や機械は何もなく、どうやったらなれるのかも分かりませんでした。
そこで少しでも農業に携われることをと思い、大学では生物資源科学部の地域開発科学科に入り、農家を研究対象として勉強しました。
卒業後は斐川の法人で苗作りを経験し、実際の農業と、自分がやりたかったイメージが近いということが分かったんです。そこで「やっぱり農業がやりたい」と。
その後地元である安来で、花の新規就農者の募集があり、就農相談を経て平成26年に研修がスタートしました。
そもそも、なぜ『イチゴ』だったの?
イチゴは12月頃から収穫が始まる。
元々「安来で農業ができれば何でもいい」と思っていたんです。
当時安来で就農者の募集の際、「花」、「葉もの」、「イチゴ」をお勧めされていて、それぞれの指導農業士の話を聞いたり、実際に作業を体験させてもらいました。そこでイチゴが一番自分の性格に合っていると思ったんですよね。
葉ものは年に4作も5作もできるというところが、ルーチンワークになってしまいそうで僕には合わない。
花は食べ物ではないということと、時期で単価が大きく変動するということが気になりました。
はい。イチゴは、誰もが喜ぶもの、口に入るもの、可愛い実がなること、そういった特別な存在だと思ったのです。
独立への想い
あまり人の言うこと聞いて仕事したくなかったんですよね(笑)
また、頑張った分だけ作物は応えてくれます。そうやって自分の責任でやってみたいという想いがありました。
農家にも営業力が必要
独立となると、営業力も必要になると思いますが石橋さんのお考えを聞かせてください。
そうですね。生産者であり経営者でもあるので、売り込みも大切です。
農協に出ると、「石橋農園のイチゴ」ではなく「イチゴ部会のイチゴ」として販売してもらえます。ただ、今後は「石橋農園のイチゴ」のブランド力もアップしていきたいです。
取引される店舗は、どのように石橋農園を知られることが多いのでしょうか。
紹介が一番多いですね。
最初の1軒目は、ハウス資材の方の紹介でケーキ屋さんで使っていただけることになりました。
そのケーキ屋さん主体のマルシェで他のレストランやケーキ屋さんに知っていただけました。今は口コミに頼っている部分があり、今後の課題として挙げています。
各メディアに引っ張りだこ
石橋農園は新聞やテレビなどのメディアにも取り上げられていました。反響は?
様々なメディアに取り上げていただいて、本当にありがたいです。
実は、ああいった取材は農協を通してお話をいただくので、あくまでイチゴ部会の人間として出させてもらっています。
「石橋農園」としての取材は鳥取ペディアさんが初めてではないでしょうか。
就農支援制度について
農業を始めるにあたり、就農支援制度は利用されましたか。
はい。先ほどお話しした就農相談や研修も制度の一部ですし、補助金もありますので、活用しています。
就農支援制度は全国的にありますが、地方自治体によって内容が大きく異なります。
知りませんでした。地方自治体によっても異なるのですね。
安来市はとても手厚い支援があり、「リースハウス制度」が有名です。
新しくハウスを購入する場合、金額の7割を補助金で負担され、残りの3割は10年間分割で支払う仕組みになっています。
※平成31年度までの支援制度
3割を10年で!?それは相当負担が軽くなりますね。
すごくありがたい制度です。実際ハウス1棟300万円前後しますので、この制度がなければ始められなかったと思います。
農家という仕事の魅力
「美味しい」と言ってもらえると報われる、農家という仕事。
農業、農家という仕事のやり甲斐のあるところ、魅力を教えてください。
とても大変ですが、特にイチゴ農家は実が出来て、人が食べて、「すごく美味しい」と言ってもらえると報われます。
若者へメッセージ
石橋さんと同じようにイチゴ農家になりたい、イチゴ農家でなくても農家に携わる仕事に就きたいと考える若者にメッセージをお願いします。
まずは、現場に行ってみてやってみてほしいです。
実際仕事に就いてから辞めてしまう方もいるので。実際にやってみて、それでもやりたい気持ちがあればどんどん突っ込めばいいと思います。きっと面白いことができますよ。
フィールドでそこの空気を吸ってみてください。ハウスの中ってなかなか入る機会もないでしょうし。話や本だけでは分かることは少ないと思います。
山陰について
島根県安来市の魅力
ここからは地域性の話を少し。安来市の魅力を教えてください。
鳥取の人からだと笑われちゃうかもしれないけど(笑)、町もあって、緑もあって、生活する分には困らないですよ。隣には米子も松江もありますしね。
有名なのは安来節や月の輪祭りや中海マラソンでしょうか。マラソンは体力づくりのために僕も出ました(笑)
米子と松江、どちらに行くことが多いですか?
安来の人にはついつい聞いちゃう。米子と松江、買い物や遊びに行くとしたらどっち!?
僕は松江が多いですかね。大学が松江でしたし。今取引のあるお客さんも松江の方が多く週に3、4回は行っています。
米子にはイチゴ部会の一員として3つの市場にイチゴを卸していますし、境港のケーキ屋さんともお取引があります。
鳥取県と島根県の県民性の違い
鳥取県と島根県で県民性の違いってあると思いますか?
うーん…あると思います(笑)
もしかしたら鳥取県民というよりも米子市の方に言える事かもしれませんが、商売上手の方が多いように感じます。それは農家の方でも。見習わなければいけませんね。
最後に
今後の目標
長いスパンで考えて、「安来のイチゴと言えば石橋農園だよね」と言われるようになりたいです。他の農家に埋もれず、堂々とできるようなイチゴを作っていきたいです。
読者へメッセージ
長時間に渡るインタビュー、お付き合いいただきありがとうございました。最後に読者の方にメッセージをお願いします。
是非、石橋農園のイチゴを食べてもらいたいです!何もかけずに(笑)
必ず美味しいと言っていただける自信があります。
そして観光農園もやっておりますので、圃場にもぜひ遊びにきてください。
今回の鳥取×働く人は石橋農園代表の石橋賢一郎さんでした。ありがとうございました。
こちらこそ、取り上げていただいたありがとうございました。
石橋 賢一郎(いしばし けんいちろう)
石橋農園 代表
1988年12月23日生まれ
島根県安来市出身。小中学生の頃から農業に興味を持ち始める。農家ではなかったものの父親が小さな畑を所有しており、そこで手伝う事もしばしば。もしかしたら、テレビやゲームなどの影響もあったかもしれない。
小さい頃は体が弱く、普通の仕事には就けないと思っていた。しかし、自然に囲まれている時は不思議と元気になれた気がする。
まだ農家の夢は確信とならず。
家族や知人に農家がいなければ、自分で学んでいくしかない。大学では生物資源科学部の地域開発科学科に入り、農家を研究対象として学ぶ。
卒業後は斐川の法人で苗作りを経験。これまで自分が描いていた農業とのギャップがない事に気付く。ここで確信に変わる。
就農相談を経て平成26年に農業研修がスタート。
平成28年9月に安来市下坂田町でイチゴ農家として独立。全て自分の責任がしてみたかった。地元農協のイチゴ部会では最年少農家である。
新規就農者10a当たりのイチゴ収量は4tで一人前と言われる中、2作目で4.8tを収めることに成功。3作目では農地面積を9.4aから14.4aと1.5倍近くの広さへ。
頑張っても怠けても作物からは返事がある。
体が弱かったあの頃の自分は、もうどこかにいっていた。
石橋農園オフィシャルサイト
http://ishibashi-ichigo.jp/
石橋農園ECサイト
https://ishibashi-shop.ocnk.net/
インタビューを終えて
裏話ですが実は天候の関係などもあり、ようやく実現したインタビューでした。
今度はイチゴが実る時期に遊びに行かせていただきたいです。
石橋賢一郎さん、ありがとうございました!
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山陰ペディアの名ばかり委員長。
担当はシステム、デザイン、ライティング。
本業はWebプロデューサー。
好きな事は、ゲーム・アニメ・お酒を飲むこと、歌うこと。
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