米子市旗ヶ崎にあるレストラン舶来亭
コンセプトムービー
今回の鳥取×働く人は舶来亭オーナーシェフの谷田さんです。谷田さん、宜しくお願いします!
街の洋風食堂 舶来亭
舶来亭ってどんなお店?
特別な日に食べたい本格的な料理から、街の洋風食堂的に日々の食事としても通いたくなるお店です。愛されるお店作りの秘訣を教えてください。
愛されているかどうかわからないですけど…。
コック、料理人って何でも作れるようなイメージないですか?
メニューには載せていない品を作ったり、お年寄りの方の口に合うようなものを作ったり。お客様の要望に応える事を心がけています。近所のお婆ちゃんが「チャーハン作ってくれ」と依頼があったので作ったり。
あとは、持ち込みされる方もいらっしゃいます。
基本的には断りません(笑)コックじゃないと調理が難しいものを持ち込んで来てね。それで一品作ったりします。
愛されているかどうかはわからないけれど、要望があればコックとしてはそれに応えてあげたいし。お客様の様々な要望があって、今の舶来亭の雰囲気やカラーがあるのだと思います。
大人気メニューのカレー
カレーもハンバーグもステーキもお惣菜もどれも人気で、目玉と呼べるメニューがたくさんある舶来亭さん。特にカレーは『ちょい悪コックさんの舶来カレー』としてレトルト販売もされる程の人気です。美味しいカレー作りの秘訣や、商品化されるに至ったエピソードがあればお聞かせください。
今のカレーの開発当初からレトルト販売はしたくて、模索していたんです。しかし、大量生産前提の工場では舶来亭のカレーの味を再現できず、かなり試行錯誤しました。このままでは舶来亭の看板がついたものは提供できないと。
開発を始めたのが10年以上前、完成したのが6~7年前だと思う。
構想から完成まで、かなり時間をかけられていますね。
添加物を極力入れないというポリシーでやっているので、保存料やアミノ酸を避けてレトルト化するのは難しくて。研究を重ねて、色んな方の協力も得られて完成しました。
開業して約10年
適正な価格で提供したい
リーズナブルな価格で限定的にキングステーキやハンバーグを提供されています。あの価格であのサイズが食べられるお店は中々ないのではと思います。
よくコストパフォーマンスが良いと言っていただくのですが…自分が考える適正な価格で提供したいという想いがあるので、特別に安くしている、という意識はないんですけどね。
ランチの野菜ビュッフェや舶来亭のお惣菜も大人気です。
外食に行くと野菜不足になりがちじゃないですか。米子に戻ると決めた時にお年寄りがスーパーやコンビニのお惣菜を買っていると聞いたので、何とかして野菜を使いたいと考えて始めました。
各種宴会・パーティーにも対応
各種宴会やパーティーもできますよね。団体は何名まで利用できますか?
最大で80名までは対応した事がありますが、50人くらいまでが余裕を持って利用していただける人数だと思います。
氷温の技術とは…
舶来亭さんといえば、氷温の技術を取り入れておられます。氷温の技術について教えてもらえますか?
僕の妻のお父さんが氷温研究所の顧問だったんです。その繋がりもあって、コックとしても氷温の技術を知ってみようと学びました。
わかりやすく言うと…雪の下の大根や白菜が美味しくなると言うじゃないですか。細胞が凍結寸前の温度帯になる事によって「死ぬまい」と思って、活動力を高めて不凍液のようなものを出します。それが旨味成分に繋がるという考えのもと研究されている知識や技術です。
谷田潤一さんの素顔に迫る
料理人だった父親にコックにはなるなと言われる
谷田さんが料理の道を志した時期や、そのきっかけをお聞かせください。
父親がコックだったんですよ。料理をするのも食べる事にも興味はあったんだろうけど、父親に「コックは大変だから、コックにはなるな」と言われてましたね。
コックの道に興味はありながらも最初は車屋の営業をしていました。その後は、食品卸問屋で営業職をしてた。レストランや居酒屋と取引させてもらって、納品したりね。香辛料とかソースとか納品の度に勉強がてら舐めさせてもらって、味を覚えていきました。
マクロビオティックについて学ぶ
最初は高知県でマクロビオティックのお店に勤める事になりました。
知ってます?マクロビオティックって。
もしかしたら、お店や時代によってマクロビオティックの解釈や思想は変わるかもしれないけれど。玄米菜食で肉も魚も砂糖も使用しない食事法や思想の事をマクロビオティックと言うんだよ。そういうお店をしたいっていうオーナーさんがおられて、何かのご縁で僕がする事になって。
その時に大阪のマクロビオティックを学ぶ場所があって、そこで学びました。
食材にもかなりこだわっていたお店だったんですが。料理を学んでいくうちに、コックとしてもっと幅を広げていきたいと感じるようになったんです。
マクロビオティックで学んだ知識や技術を活かして、こだわった作り方をすればお客さんに喜んでもらえるんじゃないかと。
福山でカレー屋の店長に
ある時、福山の方でカレー屋をしたいというオーナーさんに声をかけてもらって。そこの店長を任される事になりました。
そのカレー屋さんは当時、行列ができるようなお店になっていって。ただ、自分流にどんどんこだわった味にしていきたいと考えるようになりました。
しかし、当時の僕は衛生管理者の資格しか持っていなくてね。調理師免許とろうと思って。
参考書買ったんだけど、日に200人とか来てもらえるようなお店だったから日中は滅茶苦茶忙しくて。夜中に調理師免許の勉強をしました。
試験まで2ヵ月。参考書のページ数を60で割って(笑)
何とか調理師免許がとれました。
神戸に通って舌で味を覚える
資格はとれたけれども、もっと色んな味を知りたくて神戸に通うようになりました。やはり、神戸という街は西では洋食が盛んなので。休みの日を利用していました。自分が気に入った店を見つけて、舌で覚えて帰ってきました。
そこでようやく福山に小さな店舗を借りたんですけど、この開業する時がまた最悪なタイミングで。リーマンショックや東日本大震災の時期で。
色んな方に支えられて今の舶来亭があります。
思い出深いエピソード
舶来亭を開業してからのお客様との思い出やエピソードをお聞かせください。
アレルギーがあるお子さんに食べさせてあげたいと、女性の方にお願いされて。お子さんにすごいアレルギーが出たらしく、お母さんも自分のせいじゃないのに責任感じて泣いておられて。
宿泊先のホテルやレストランでは対応できないと断られたらしくて。
相談された時に、どうしても応えてあげたいなと思ってね。元々マクロビオティックだったので、豆腐で鰻を作ったりグルテンでから揚げを作ったり。代替の展開が考えられるので、そういう部分ではマクロビオティックの経験があって良かったな、と。
お客さんの要望に応えられた時はコック冥利に尽きます。
電子レンジを置かなくなった話
今まで仕事をしてきた中で、失敗談があれば教えてください。
失敗談はねぇ…。まだ福山で小さい舶来亭だった時に常連さんですぐ近くの料亭の社長さんがおられたんですよ。すごい気さくな方なんですが。
ある時ね、ハンバーグの中が赤いと言われて…。それで電子レンジに入れたんだけど。
そうしたら「時間がかかっても構わんけん、お前オーブンで焼けよ」って言われてね。自分の考えの甘さに凹みましたねぇ…。
あれからお店に電子レンジは置かないようになった(笑)
すごい良い方でお世話になってね。日に2人とか3人しか来ないような状態になった時に「お前が作る物は絶対に美味いけん負けたらいけん。続けろ」って言ってくださって。僕の恩人です。
『てんてん』の由来は!?
『てんてん』の愛称で知られる谷田さん。由来を教えてください!
簡単です(笑)カレーの時代にいたスタッフの女の子がある日突然そう呼んだんです。
響きが良くて気に入っているんで僕もハンドルネームにしています。
一生をかけてやるには楽しい仕事
料理人の道を志す若者にメッセージやアドバイスをください。
僕が偉そうに言える事なんてないんだけど…。
文明が発達していく中でなくなってしまう仕事もあるかもしれないけど、飲食業は人の手をかけていかないといけないと思う。
近い場所で生のお客さんの声が聞ける仕事なので、一生をかけてやるには楽しいんじゃないかと思います。
最後に
今後の夢や目標
息子がいるのですが、幼稚園の年齢の頃から「コックさんになる!」と言ってたような奴で。
ポリシーや考え方をきちんと引き継いで、息子の代でもまた皆さんに可愛がってもらえるようになると良いなと思います。
読者へメッセージ
最後に読者の方や舶来亭ファンの方にメッセージをお願いします。
今回の鳥取×働く人は舶来亭オーナーシェフの谷田潤一さんでした!ありがとうございました。
谷田 潤一(たにだ じゅんいち)
舶来亭オーナーシェフ
鳥取県米子市出身
父親がコックだったが「大変だからお前はコックにはなるな」と言われる。それでも食べる事が好きだったし料理にも興味があった。
車屋の営業を経て、食品卸問屋の営業となる。コックの道を諦めきれず営業先でソースを舐めさせてもらい味を覚えたりもした。
最初は高知県でマクロビオティックの店で勤務する。玄米採食で肉も魚も砂糖も使用しない調理法は谷田のコックとしての基礎となった。
その後は福山でカレー屋の店長をする事となる。吸収しては次の技術を習得したくなる谷田は、様々な店を転々としがちだ。日に200人は訪れるカレー屋の店長職は多忙を極めた。
いつからか自分の店を持ちたいと感じるようになる。
衛生管理者の資格しか持っていなかった谷田は調理免許取得を決意。参考書を買って、ページ数を試験までの日数で割って勉強する事。日中は人気カレー屋の店長業務があるため、勉強をする時間は夜中だった。それでも何とか取得する事ができた。
調理師免許取得の次は更に舌を洗練していく作業。休みの日を利用して洋食産業が盛んな神戸に赴き、気に入った店を見つけては舌で覚えて帰り、キッチンで再現をする。ひたすらこれの繰り返し。
そして、晴れて福山で小さな店舗を借りて舶来亭が誕生する。
子供からお年寄りまで幅広く愛されるお店となった。
谷田にとって、お客様の要望に応える事はコック冥利に尽きるということ。人気メニューのカレーはカレー屋さんで店長をしていたから。美味しいハンバーグが作れるのは氷温技術を取り入れたから。アレルギーの代替調理が可能なのはマクロビオティックを学んだから。
コック谷田にとっては全てが"修行"だったのだ。
舶来亭公式ホームページ
http://hakuraitei-yonago.jp/
インタビューを終えて
谷田潤一さん、ありがとうございました!
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山陰ペディアの名ばかり委員長。
担当はシステム、デザイン、ライティング。
本業はWebプロデューサー。
好きな事は、ゲーム・アニメ・お酒を飲むこと、歌うこと。
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