鳥取県南部町で大工職人・猟師として活動
コンセプトムービー
今日は矢頭さんのご自宅にある作業部屋をお借りして取材させていただきます。矢頭さん、よろしくお願いします。
大工職人として
自己紹介
20代で独立
親父の生前にも、俺は高校を出て少しふらふらしてからはずっと大工をやっています。7~8年は親父に習って大工をさせてもらっていました。
大工としてのこだわり
お客さんから直接要望を聞いて、自分の技術ではここまでできるということを工務店と合わせて、形にしていきます。
毎晩JET STREAMが流れるまで仕事
ただ衣食住の一つであるので、建築に関わる全体人口としては、そこまで減っていないと思います。
やり甲斐を感じるところ
猟師として
猟師を始めたきっかけ
自分でも大分調べましたが、やはり先に始めている仲間がいたというのは心強かったです。自分の足でやってみることが一番大切です。
免許について
この中でもわなや網は、猪や鹿の被害も多く、比較的簡単に取得できます。猟銃の二つは厳しく、なかなか難しいですね。
それが悔しかったのもあって、翌年には24頭獲ることができて、そこから周りの人も見る目が変わったところもあったと思います。
師匠について
俺らなんかがわなを掛けると、わなの匂いが残ってしまって、捕まえるまでに2週間、1か月かかることも多いです。
しかし師匠はわなを掛け、その場をみて「この猪なら1週間で掛かるよ」とぴったり言い当てたり、掛からないのを判断するとすぐに引き上げたりするんです。本当にレベルが違いすぎます。免許があるとわなを30個かけることができて、普通はできるだけ多く掛けるものなんですが、師匠は見極めて5か所しかかけなかったり。
年間30~40頭程度を狩猟
農家さんの被害は甚大
わなを掛けて猪を山から引っ張り出してきた時、農家の方から「ありがとう」と言われるんですよね。その時、俺らは感謝されることをしているのだとびっくりしました。その一言の感謝の言葉が、すごくやりがいになります。
猟師の年齢層
40代で猟友会に入ったのですが、その頃50代60代の方はほぼおらず、70歳以上ばかりだったんです。そこではとても良くしてもらえましたし、なかなか獲れない時は沢山のことを教わりました。
狩猟の学び方
わな自体、掛け方自体は変わっていないんです。向き合い方が変わったというか、見えていなかった見方ができるようになったのか、一気に見えるようになったんです。だから何が変わったとか実感がない部分もあります。
また、山自体はいくらでもあるのに、わなを掛ける場所は限られているので、猪猟師同士の取り合いもあります。俺の師匠は猟友会の中で、「若手にわなを掛けさせてくれ」と言ってくれたことがあり、俺に「好きに掛けなさい」と間接的に言ってくださったような気がして、嬉しかったですね。
狩猟をする上でのルールやマナー
わなとわなの間隔の決まりは基本的にはないですが、人のわなのすぐ近くに掛けるのは、ルールというよりマナー違反と言えるでしょうか。
中には人のわなを作動させたり、酷ければ掛けている罠を外して持って帰られてしまうこともあるようです。
駆除した害獣のその後
夏は脂が少なく商品価値としては低いので、中には捨ててしまう猟師もいるようですが、解体施設で安く受け入れてくれる場所もあるのでそこに渡したり、俺は自分で解体小屋を作って処理し、自分で食べたり、人にあげたりしています。
食べて供養する
血の処理や、解体処理の方法にもよりますが、どうしても猪は獣臭さがあるので、苦手な人もおられるかと思います。特に最初に食べた猪が臭いと、そういうイメージが強く残ってしまうのでしょう。
ただ、鴨や鳩、猪を食べていると、豚や鶏って本当に美味しいんだなと思うことはあります(笑)やはりアイツらは最強です(笑)
美味しい猪肉の見分け方
発情期にはフェロモンが出て、オスの背に"ヨロイ"と言われる脂肪が固い鎧のような部位ができ、肉が臭くなるんです。
矢頭祐樹の素顔に迫る
幼少期や学生時代
今でもあの頃の自分は嫌いで、とにかくかっこつけでした。前髪ばかり気にするような男で。今では汚いおじさんだけど、当時はかっこよく見せたい気持ちがすごく強かったんです。人からどう思われているのかをすごく気にして、人から見られた価値が自分の価値だと考えていました。
そしてそんな自分も良いんだと、自分の価値って外見じゃなくて内面なんだと思えるようになりました。そこからやりたいことだけをやるようになって、そんな今の自分はめっちゃ好きです。
丸一日のお休みってあるんですか
亡き父への想い
25歳の時、親父はがんで亡くなりました。その時神にお願いしましたね、「俺みたいな人間は死んでもいいけん、親父を長生きさせてくれ」って。もちろんそんなこと親父は望まないでしょうけど。そのくらい、親父は誰からも好かれる人間でしたし、自分にはそれほど価値を感じていませんでした。
その後の人生も30歳くらいまでは色がついておらず、本当に心にぽっかりと穴が空いた感じで、喪失感が強かったです。今でこそやりたいことをやって人生楽しいですが、その頃があっての今があると思います。
南部町について
南部町の魅力
米子市から南部町へ移住
お金をかけて新築を建てるという選択肢もあったのですが、今後転居する可能性も含めて、中古住宅をリフォームして格安で入れることを前提に、この家を選びました。
自宅は自分でリフォーム!
この家に関しては半分しか使っていない感覚ですが、今の仕上がりは本当に満足しています。住み始めてから「これをやりたい!」ということはあっても「やらなければよかった」と思う点は一つもありません。
自然に囲まれて子育て
子供が多い地域だと、同じ学校でもクラスメートの顔しか知らないというところも多いでしょうが、ここでは上下級生の顔までしっかり知っています。休みの日に中学生が声をかけてくれたりして、人との繋がりを深く持てるのは田舎の特権だと思います。
最後に
今後の夢や目標
仕事としての高みを目指すには年齢がいってしまいましたし。もっと上を目指せと言う人がいても、家族を食わす、家族に苦しい思いをさせないということが一番です。
猟師はあくまで趣味としてであり、面白くなければやめるかもしれませんし、必ずやらなければならないのは大工だと思っています。分を弁えずに大工を辞めて、というのはとりあえず今の状況では選択肢には入りませんね。
多分ずっと続けるのでしょうが、あくまで人生を楽しくするための趣味で、義務的に続けるという気持ちはありません。自分の色として、個性として続けていければいいと思っています。
読者へメッセージ
ただ実際、農家の方は本当に困っていて、「ありがとう」という言葉の裏には、本当に困っていたのだということの現れだと思っています。実害は市町村範囲で広がっていて、それが天災や病気のように全体に降りかかるのではなく、部分的に被害があることです。
有害駆除は、猪を絶滅させるための活動ではなく、適正な量にして、あくまで数量を調節することだということが大前提にあります。そのことを、できるだけ多くの人に理解していただけたらと思います。
また、獲った肉を簡単にお金に換えられるシステムができれば、更にジビエが広がるきっかけにもなると思います。猟師の高齢化は進んでいて、新しいことは取り組みにくい一方で、若い人間はSNSやインターネットを通して販路を広げることができる可能性があります。そこを一律化して、狩猟の技術が次の世代にきちっと伝わるようなシステムができればと思います。もちろん地域によってジビエの店の多さや需要も変わるので、その地域ごとのやり方が必ずあると思います。地域の雰囲気を尊重しながら作っていく必要があります。
矢頭工務店代表/猟師
昭和50年3月27日生まれ
鳥取県米子市出身
25歳当時、大工だった父が他界。そのまま父の仕事を引き継ぐ事となる。周囲の人間にお世話になりながら、若くして独立をする事となる。仕事に夢中になって取り組む日々。気付けば0時だ。ラジオから流れるJET STREAMが終業時間を告げるベル代わりだった。
出来る事なら自分が代わってあげたい。自分には何の価値も感じられなかったが、父は誰からも好かれるような人間だ。それでも代わってあげる事はできないし、父はそんな事は望まない。
学生時代は自分が大嫌いだった。人の目ばかりを気にして生きてきたが、大工の世界は違った。自分の見た目を気にする余裕なんてなかった。父を失って空いた穴を埋めていくように、仕事に時間を使っていった。それでも穴は埋まらなかった。
そんな自分を好きになってくれる人が現れた。一緒に何でも楽しんでくれる人だ。
少しだけ自分に自信が持てた。
それからは、自分が思うままに仕事を続け、そして多くの"遊び"を知った。狩猟もその中の一つだ。多くの人と出会う事に。
ある意味自分が運が良かったと思うのは、25歳で父親の背中を追いかける事しかできなくなった事だ。大工として一流、多くの人間に愛されていた父親。永遠に超える事のできない壁が聳え立ち続ける。
未だに父親の背中を追いかけている矢頭。仕事に打ち込み、遊びを知り、多くの友人達に囲まれている彼に、お亡くなりになった父親の姿が重なって見えた。
facebook
https://www.facebook.com/u.king.ok
インタビューを終えて
矢頭祐樹さん、ありがとうございました!
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